はじめてOkuMasaにお越しいただくお客様のための、日本の鍋文化やさしいガイド
要点 — しゃぶしゃぶは、日本のファミリースタイルの鍋料理です。卓上の鍋をみんなで囲み、琉球在来のアグー豚や季節の島野菜を、澄んだダシでさっと泳がせて(しゃぶ)、好みのたれで取り分けていただきます。
こちらのサービスは、素材とダシを最良の状態に整え、そっとガイドすること。お客さまご自身が調理し、分け合うのが前提で、一皿ずつの個別盛りではありません。
なぜ、このページが必要か
はじめてのお客様方の中には、「スタッフが一品ずつ調理・配膳してくれる」と想像される方もいます。これは西欧のフルサービスのコース文化からくる自然な感覚です。一方、日本の鍋文化では、食卓の中心が“竈(かまど)”であり、客が参加するのが伝統です。このガイドは、そのギャップを埋め、日本での食体験のイメージを事前に共有するためのものです。
一文でいうと「しゃぶしゃぶ」とは
薄切りの肉と季節の野菜を、澄んだ香り高いダシでやさしく泳がせ、卓上で分け合って食べる、日本のファミリースタイル鍋です。
言葉の由来は、肉をだしにくぐらせる時の音を写した擬音語(しゃぶしゃぶ)。
雰囲気は楽しく静か、テンポはゆっくりが基本です。
横並び比較(違いを一目で)
体験 | 調理は誰が? | 提供スタイル | 味の枠組み | テンポ |
---|---|---|---|---|
フレンチ | シェフ | 個別の盛り付け | ソース・ジュ | 同期・演出重視 |
焼肉 | 客 | 焼いた肉+多彩な副菜 | 漬け・にんにく | 活気・賑やか |
中国式火鍋 | 客 | 仕切り鍋・多種の薬味 | 強い香味・辛味 | にぎやか・長時間 |
OkuMasaの しゃぶしゃぶ | 客 (シェフの下準備) | 澄んだダシ+極みの二種だれ | 繊細・素材重視 | 静か・ゆっくり |
OkuMasaのしゃぶしゃぶの価値
OkuMasaでは、しゃぶしゃぶに沖縄琉球の個性を加えます。
やんばるの島野菜とアグー豚。創業者の新崎シェフは従来のしゃぶしゃぶの常識を覆し、島野菜を最後のひとくちまで最高の美味しさに保つためのしゃぶしゃぶを考案しました。当店のしゃぶしゃぶが特別で、唯一無二のものである所以です。アグーのやわらかな甘み、豊かな森と海に抱かれて育まれた島食材の繊細な風味がダシに重なり続けます。
鍋に宿るこころ — 日本で「鍋」が意味するもの
ガスやIHのない時代、家の真ん中には土鍋と火鉢がありました。主(あるじ)が用意し、皆で仕上げて分かち合う。その作法は今も生きています。
鍋文化が守ってきた3つの価値
- 一座建立(いちざこんりゅう)
鍋は真ん中。手を差し出し、譲り合い、勧め合う。味と同じくらい会話が主役です。主客、あるいは参加者全員が心を通わせ、空間全体をより良いものにしようという意識を持つことで、一体感の創出に繋がります。心地よい雰囲気や空間が生まれ、お互いの心が通い合う。参加者全員が主体的に場を創造し、心を一つにすることによって、単なる食事以上の深い感動や一体感が生まれます。 - 簡素の美
素材は最短時間で火が通る厚みに整え、味つけは引き算。素材の輪郭が主役です。過剰な装飾や手段をなくし、本質的な部分だけを残します。物事の本来持つ形や構造を際立たせることで、内面的な美しさが引き出されます。禅寺の空間のように、鮮やかな彩色や装飾が少なく、素材感や空間の余白が活かされることが洗練された美しさです。 - 自分のペース
一口ずつ仕上げるから、食べる直前がいちばん熱くておいしい。誰かの皿を待つ必要がありません。周囲や環境に左右されず、自分の価値観や判断基準を大切にできる状態です。自分のペースを保つことで、無理なく食事を継続できます。ストレスを感じにくく、安定した精神状態を保てるからこそ、自然と会話が弾みます。
サービスの意味(あえて、しないこと)
私たちは”おもてなし”を、手をかけすぎない思いやりと捉えています。
私たちがすること
- ダシ・タレ・食材を最適な形で丁寧に準備します。
- 火加減、だしの差し足し、お飲み物など、卓上の整えを静かに行います。
- 食事が進んだ最後の締めで、仕上げのおじやをお作りします。
しないこと
- 一皿ずつの個別盛り付け、全品の全面代行調理。
- 派手なパフォーマンスや見せるための演出。
なぜか?主役は「みなで仕上げて分け合う」ことだからです。
その方がしゃぶしゃぶ本来の味が一番きれいに立ち上がります。
もし手助けを増やしてほしいと感じたら、最初にお気軽にお伝えください。数切れ“見本しゃぶ”をするなど、フォーマットを崩さずにサポートします。
当店での流れ(90分、静かで簡素)
開始枠は30分ごと。お席は約90分です。
0:00 — ご来店とセット
お席へご案内。お飲み物をご用意し、事前申告のアレルギーを最終確認します。
0:10 — だしが“揺れる”温度へ
最高のダシが入った鍋と2種の極上たれをご用意。表面が静かにゆらぐのがはじまりの合図です。
0:10–0:50 — あなたのリズムで
お肉をダシにくぐらせて3〜5秒で色が淡く白っぽくなったら食べ頃です。まずぽん酢(明るい柑橘)、次に胡麻(深いコク)で“味の幅”を感じてください。野菜は堅いものからダシの層を作るように。肉は一枚ずつ。煮立てず、静かな“ゆらぎ”の中で。ほとんどアクは出ませんが、必要であればアク取りで除いてください。ダシに脂が浮いてきますが、これは取り除かないほうが賢明です。当店が厳選しているアグーの脂は、特別なのです。
0:50–1:10 — 〆(しめ)
仕上げの一杯に。会話と鍋の記憶がすべてしみ込んだ、やさしい終幕です。
1:10–1:30 — デザートとお見送り
余韻を崩さずにお開き。星空、あるいは静かな夜へ。
「ファミリースタイル」をもう少し
しゃぶしゃぶでは、食材は大皿で届き、中央の鍋で仕上げ、各自で取り分けます。
イメージはスイスのフォンデュやラクレットに近く、フレンチのテイスティングコースとは違います。
ファミリースタイルには——
出来たての熱さを保てる(食べる直前に仕上げる)、
会話が自然に生まれ(小さな“調理と分かち合い”の繰り返し)、
素材の輪郭が見える(重いソースで隠さない)
——という利点があります。
しゃぶしゃぶの由来とアグー
しゃぶしゃぶは20世紀に、古い鍋の作法と肉食文化の流れが重なって生まれ、“しゃぶ”という音から名がつきました。OkuMasaでは、やんばるの島野菜を鍋の中へ。沖縄在来種のアグー豚がその風味を増していきます。きめ細かな脂とやわらかな甘みが特徴で、薄切りにすると数秒で火が通り、だしを濁らせません。アグー豚は、一般的な豚と比べてコレストロール値が低く、オレイン酸が豊富で健康的。発育速度が遅く、一頭あたりの出産頭数も少ないため、希少性が高い豚です。アグー豚の肉に脂が多いように見えるのは、身体が小さく小柄な体型であるため、肉に対して脂身の比率が高く見えやすいからです。アグーの脂は融点が低く、口溶けの良い「とろける脂」が特徴で、旨味と甘味、そしてヘルシーさが魅力です。
気楽なエチケット
- 個別盛りはありません — 小皿ではなく鍋そのものがメインです。
- 鍋は穏やかに — ぐらぐら沸騰より、静かな小沸80度くらいがいちばんおいしい。
- 写真 — 席から無音・ノーフラッシュで数枚だけ。あとは目と記憶で。
- キャンセル — 当日100%(不可抗力は相互協議)。
アレルギー・ベジ対応、お子様について
アレルギー/ベジ — 48時間前にご連絡ください。だしや中核食材の当日変更は困難です。
こども — どなたでもご来店いただけますが、静かに過ごせない場合は別テーブルの方のために一度席を離れることを推奨いたします。卓上は熱源です。手の届く範囲に配慮ください。
西欧のフルサービスに慣れている方へ
しゃぶしゃぶは”参加するおもてなし”です。
「良いサービス=全工程をやってもらう」と感じるのは自然なことですが、当店のスタッフの役割は、全部を代行することではありません。鍋文化の“良いサービス”は、ほとんど手を煩わせないよう完璧に整えておくこと、そして必要な瞬間だけそっと現れること。それができていれば、見守られている安心と自分のペースの自由が同居します。
ベビーカーのスペースなど、事前にお知らせください。火力の調整、鍋の位置、スタッフのサポート量も調整します。少し多めの手助けをご希望であれば、ご遠慮なくどうぞ。
ミニ用語集(耳にする言葉)
- 鍋(nabe) — 日本の卓上鍋料理の総称
- だし(dashi) — 旨味の出汁。(当店は島野菜が映える設計)
- ぽん酢(ponzu) — 柑橘×醤油のたれ(当店はシークワーサーと特選醤油)
- 胡麻だれ(goma‑dare) — 胡麻のコクのたれ(当店は焙煎して豊かな香り)
- 〆(shime) — ご飯と卵で締めくくる一品(当店は最後まで風味絶佳)
- おもてなし(omotenashi) — さりげない配慮・押し付けない親切
便利な一言:
- 「おいしい」/Oishii — Delicious.
- 「ありがとうございます」/Arigatō — Thank you.
- 「いただきます/ごちそうさま」— 食前/食後の感謝